狼陛下と仮初めの王妃



上を見上げれば、緑の葉の向こうに青い空と日の光が透けて見え、風に揺れる枝がキラキラ光る木漏れ日を作っていた。

地面には小さな草花が咲き、二匹の小動物が草を食んでいる。

互いに身を寄せあって食べる様子は仲むつまじくて、見る者の心を和ませるものだ。

こんな場所にいると、陛下も心が安らぐんだろうか。

コレットが陛下に尋ねると、「そうだな」と、短い言葉しか返ってこない。

けれど、その表情は城の中にいる時よりも穏やかに見え、少なからず彼もお出かけを楽しんでいるよう。

陛下は毎日の政務に心を削っているから、いつも無口で怖いのだと思う。

コレットは目いっぱい楽しんでもらおうと考え、たくさん話をして笑顔を向けた。

そうしていると開けた場所に出て、その景色を見てコレットは感嘆の声を出す。


「すごい……綺麗」


そこにあったのは、一面青紫色の花で埋まった野原と小さな池。

花の上は白い蝶がひらひらと舞い、池には桃色の水鳥がいて水の中にくちばしを突っ込んでいる。


「ここに連れて来たのは、それだけじゃない」


陛下は馬に乗ったまま野原の奥へと進み、木立の中に入った。

まもなく木立の切れた向こうに、ガルナシア城の藍色の屋根の先が見えてきた。


「わあ、ここは、お城の裏山だったんですね」


お城の向こうには都街が広がっていて、遠くアルザスの山まで見える。