狼陛下と仮初めの王妃



もっと触れてほしい。そう思う自分に恥じらいを覚えて、さらに肌が熱くなる。

お沙汰でなった偽物の王妃を、陛下が愛して抱くことはないのだ。

こんなことを考えていることがばれないよう、コレットはぎゅっと胸を押さえた。

そんな彼女の体を、陛下は甘やかに抱き寄せる。


「君は、一時的とはいえ、私の妃だ。これからはほしい物や要望があったら、他の誰でもなく、私に言ってほしい」

「……はい、陛下」

「それだけでなく、日々の中であったこと、感じたこと。なるべく話してほしい」


陛下は、食事のときに聞くコレットの話を楽しんでいるという。

いつも笑わずに、「ああ」とか「そうか」とかの短い相づちしか返ってこないのに、意外な事実で、コレットは胸の中にくすぐったさを感じた。

食事中も狼の威厳を放っている彼が、まさか楽しんでいたなんて思いもよらない。

今夜は少しだけ陛下の考えが伝わってきて、近づけたような気がしてうれしくなった。

機会があれば先代の王の死因や、ミネルヴァの言っていた“禁じられた書物”のことを話してみようと思う。

そして、やっぱり夜の陛下は昼間の彼とは雰囲気が違うと思う。

自分だけに見せてくれている一面なのか、そう考えるとまた勘違いしそうになる。

コレットは、陛下の胸を押して見上げた。