狼陛下と仮初めの王妃



思考から離れれば、陛下がじっと見つめていたことに気づいて顔を赤らめた。


「あ……」

「ふむ。君は、笑ったり、青くなったり、表情が豊かだな。今なにを考えていた?」

「今は……えっと、その」


今さっきコレットの考えていたことなど、どう陛下に話せばいいのだろうか。

どこをとっても話しにくいことばかりで困ってしまう。

咄嗟にいい言葉が思いつかず「なんでもありません」と、か細い声を出してうつむいた。

その小さな顎が、陛下の指によってくいっと上に向けられる。

さらに乱暴に思えるほど強い力で腰も引き寄せられてしまい、コレットは声も出せずに陛下を見つめた。

突然どうしたのだろう。


「考えていたことを言えないならば、ひとつ答えてくれ。今ここにアーシュレイがいれば、君は、なんでも話してくれるのか?」

「え……?」


陛下の声には怒りの色がある。

けれどコレットを見つめる瞳には、狼のような鋭さの中にも切なさが混じっているように見える。

どうしてそんな複雑な表情をするのか、コレットには分からない。

腰に回っている彼の手は痛いくらいに強く、納得する答えがあるまで放すつもりがないことは、よく分かる。


「あの、どうして、アーシュレイなのですか?」

「私は、裁縫道具のことを彼から聞いたんだ。君は、私には言えないことでも、彼には言えるんだろう。君にとって、私は信用できない男なのか?」