狼陛下と仮初めの王妃



「君がなにをしてるのかと思えば、そうか。外は、雨が降っているんだな」

「はい……」


窓の外に向けて並んだ二本の腕は、男女の違いをまざまざと見せつける形になっている。

コレットの腕は、少し力を入れて握れば折れてしまいそうに柔らかく見え、対して陛下の腕は、筋肉があり無駄なく引き締まっていてとても丈夫そうだ。

陛下はこの腕で国を守り、そして、いずれ迎える本物の王妃を抱き締めて愛するのだ。

コレットは胸がちくりと痛むのを感じ、慌てて腕を引っ込めて、肌についた水滴を手のひらで払った。


「すごく静かな雨ですよね……わたしも、さっき、気づいたんです」

「少し冷えたな」


陛下は窓を閉めて、濡れて冷たくなった手をさするコレットをソファへ誘った。


「今夜は、君に渡すものがある」


陛下は、テーブルの上に置いてあった長方形の小箱を手に取ると、きょとんとした表情をしているコレットに差し出した。

赤色で長方形の箱は絵柄もなにもなく、今まで渡されてきた物の中では一番のシンプルさだ。


「これを、わたしに?」

「君が欲しいと言っていると、聞いたものだ。きっと気に入る」


蓋を開けてみたコレットは、小さな歓声をあげた。

中には赤いビロードで作られた針山と鋏が入っていて、小さな糸巻きがふたつと七色の刺繍糸もあった。


「これ、お裁縫の道具……ありがとうございます!」