狼陛下と仮初めの王妃



「まあ、今まではあなたを取り巻く体制が不十分だったのも、我らの反省するところです。早急に、完璧に整えねばなりませんね」


アーシュレイは書庫までの往復の間に何か変わったことはなかったかと訊いたので、コレットはミネルヴァに会って会話したことを、『禁じられた書物』のことは省いて話した。

顎を人差し指の背で撫でながら聞いていた彼は、なるほど……と小さくつぶやいて、メガネの奥にある目を細めた。


「うーん。やはりミネルヴァは側室の座を狙っているようですね。これは、陛下にもご報告申し上げておきます。他は、誰にも会いませんでしたか」

「はい……誰にも会いませんでした」

「それならば、いいです。それでは、執務は終了です。今日もお疲れさまでした」


アーシュレイは本来の目的である仕事終了を告げると、執務室の扉を開けた。

廊下にはリンダとマリアがおり、うつむき加減の姿勢でコレットが出てくるのを待っている。

彼女が一歩廊下に出ると、ふたりは深々と頭を下げた。


「王妃さま、お仕事お疲れさまでございます」


ふたりそろって言う台詞は、まるで練習したかのようにぴったりと息があっている。

今まではリンダひとりのお迎えだったのが、マリアが増えただけで途端に形式ばったものになっていた。

アーシュレイが言う体制とは、こういうことなのかと思う。