狼陛下と仮初めの王妃



それよりも、コレットは大変なことに気が付いた。

廊下では、灯点けの役人がランプを点し始めている。

急がないと書庫の中は真っ暗になって、何も見えなくなってしまう。

それに、アーシュレイが仕事終了を告げに執務室に来てしまい、そのとき部屋にいないと叱られるかもしれない。


「ではミネルヴァ大臣、ごきげんよう」


まだ何か言いたげな表情をしているミネルヴァに声をかけ、コレットは急いで書庫へ向かった。

無地の木の風合いそのままの扉は、大事な書庫とは思えないほどの素朴さだ。

それでも一歩中に入れば、置かれている書棚の数と書物から醸し出される空気の重さに圧倒されて、気が遠くなりそうになる。

ここには、今まで培われて来た国の歴史と人々の思いが詰まっているから、そう感じるのだろう。

コレットは、持っていた書物を棚に戻して、ふと、ミネルヴァの言っていたことを思い出した。

『禁じられた書物』そんなものが本当にあるんだろうかと、首を捻る。

だって、陛下は何も言ってなかったのだから。

書庫の奥にはまだ行ったことがなく、もしもあるとすればそちらの方だ。

確かめてみたくなり、ちらちらと棚にある書物を見ながら奥まで進むコレット。

すると、壁の中に小さな扉があるのを見つけた。

それはコレットの目の高さ位の位置に作られた、正方形のもの。

鍵が取り付けられており、錆びてほこりがかぶっている。

ここ数年以上開けた形跡がない。

駄目もとで、一応書庫の鍵をさしてみるが、びくともしなかった。