陛下は、このことを知っているのだろうか。
彼は、先代国王付き騎士団の団長だった人。不明と記されている理由を知っているかもしれない。
コレットは機会があれば尋ねてみようと決め、書物を閉じた。
テーブルの上にはマリアが入れてくれたお茶とシェフが作った焼き菓子がある。
焼き菓子はコレットの大好きなレモンタルトで、見れば途端にお腹が空くのはいつものこと。
「いただきます!」
作ってくれたシェフに感謝してタルトを頬張り、甘酸っぱい美味しさを堪能する。
その後お茶を口にするとすでに冷めており、かなり長い時間書物に夢中になっていたことを知った。
窓から差し込む日が、傾いている。
それは今日のお仕事が終了間近なことを告げていた。
「いけない!これを返してこなくちゃ」
コレットは書物を持って、いそいそと書庫に向かった。
その進む廊下の先に、苦手な人物がいるのを発見してしまい、思わず引き返したくなる。
だが、あからさまに避けるのも変だと思いとどまった。
後で攻撃材料のひとつにされるのも面倒だと、覚悟を決めて進む。
結果、対峙することとなった……。
「これは、王妃さまではございませんか。婚儀の日以来ですな」
唇の端だけを歪めた笑顔で礼を取る彼に、コレットは丁寧に言葉を返す。
「こんにちは。ミネルヴァ大臣、お久しぶりです」
「はて、王妃さまともあろうお方が供もつけずにおひとりとは。やはり、異国出身の平民であられるお方のすることは、違いますなあ……それで……どちらへ行かれるんですかな?」


