狼陛下と仮初めの王妃



今日の書状の処理は済んでしまい、かなり時間がある。

新たなものが持って来られるまでは、こうして読み物をするか、庭を散策するかしている。

読み物は、王の書庫から持ってきた過去の出来事を記した書物。

コレットの生まれるずっと前の立国から記録されている、年表形式の歴史本だ。

王の書庫のものだから普段国王以外は閲覧しないため、真実が包み隠さず書かれているからオススメだと、興味があるなら読めと、陛下が言ったのだ。

年表スタイルなので、コレットにも理解しやすいのもオススメ理由のひとつだ。

紐で綴じられた分厚い書物は、出来事が書き加えられるたびにページが増えていくという。

最後のページにはサヴァル陛下の即位の辺りで止まっていた。

これから先この書物には、彼が作り出す歴史が記されていく。

その中のほんの一時、仮初めの王妃がいたことも記されるのだろうか。

記されなくても、歴史の一部に自分が存在しているのは確かなこと。

そう考えれば、壮大な気分になる。


コレットは、ふと先代国王の死因に注目した。

即位してまもなく急死された先代は、流行り病が原因だったのはコレットでも知っていること。

けれど、そこに書かれていたのは『死因不明』の文字。

妙に思い、歴代の国王たちの死因を見れば『戦死』や『病死』とあって、病死の場合は病名もはっきり記されている。

先代だけ原因が分からないって、どういうことなんだろう。

公に発表されている流行り病ではないということか。