牧場では、雨降りなどで外の仕事ができないとき、アリスのエプロンやニックのベストなどに刺繍をしていた。
村の人に頼まれて簡単な子供服を作った事もある。
家具職人の父にお針子の母と、ものづくりのプロだった両親の血を受け継ぎ、コレットはとても器用だ。
思えば、城に来て以来ずっと針を持っていない。
久しぶりに針仕事がしたくなり、お裁縫セットを探し求めて部屋の中をうろうろと歩き回った。
チェストにドレッサーに衣裳部屋の引き出しまで、全部開けてみたけれど、それらしいものは見つからない。
リンダに尋ねてみようと思い立って、部屋から出る。
と、途端に、ぽすんと、弾力のある白い壁にぶつかった。
「おっと……」
弾き返されてよろけた体がしっかり支えられて、コレットの視界が白い服で染まった。
「君は、どこへ行くつもりだ?」
「へ……陛下……どうして」
「まず君は、私の質問に答えるべきだ。この夜遅くに、その姿で、どこへ行くんだ」
厳しい声の問いかけで焦りながらも、お隣の部屋にいるリンダのところへ行くつもりだと話すコレット。
その体が、すすすと部屋の中へ戻された。
「悪いが、それは、許すことができないな」
「え?どうして、ですか?」
「君は、知らないかもしれないが。最上階の廊下は、定時に騎士が見回りに来る。君のその姿を、彼らに見せては駄目だ」


