狼陛下と仮初めの王妃



けれど、彼の顔を見れば即思い出してしまうのは、仕方がないことで……。

夕食の時間は、朝食の雰囲気を再現することとなった。

初仕事で陛下の仕事の大変さが身にしみてわかったし、漠然と知っていた城の仕組みが現実味を帯びて少し分かったことなど、話したいことがたくさんあるのに言葉となって出てこない。

燭台の炎に照らされた彼の紫の瞳はとても綺麗で、料理を食べる唇は艶やかに見える。

見惚れてしまいそうになり、慌てて目を逸らす。

そんなことを繰り返しているコレットに、陛下はぽつりと尋ねた。


「執務に不自由はないか?」

「はい。アーシュレイが助けてくださるので、大丈夫です」

「そうか」


会話はそれだけ。

陛下は相変わらず威厳があって無口で、多くを語らない。

けれどそれだけにコレットには、言葉をかけられたことが優しく感じられ、胸が温かくなる。

そして、明日も仕事をがんばろうと思うのだ。

無意識な女たらしというべきか……陛下は、ずるいのだ。


夕食を終えて王妃の部屋に戻ったコレットは、湯に入って就寝の支度を整えた。

リンダが挨拶をして部屋を辞して行けば、広い部屋にひとりとなる。

灯りは全部点いたままなので、読み物や針仕事など自由にできる。


「もう初夜じゃないから、陛下はお部屋に来ないはずだわ」


勝手にそう決めて、寝るまでの間に何をしようかと、わくわくしながら考え始めた。