何故だか知っている気がしたのだ。
城に来てたったの数日、会った人など数えるほどしかいない。
あれこれ思い出しつつ、首を傾げて尋ねてみた。
「あの、どこかで会いましたか?」
「おおなんと、覚えておられますか!つい一週間ほど前、城の片隅にございます宿泊用の施設でお会いいたしました!」
ジュードは顔をほころばせて、事務的なものから一気に人懐っこい口調になった。
手放しに喜ぶ様子は、握手までしかねない勢いだ。
「宿泊用の、施設?」
コレットもよくよく思い出せば、ジュードは燭台の炎に照らされた紳士の顔と同じであった。
リンダにお風呂に入れられた、あの建物にいた人である。
あれが外国の客人についてきた騎士の宿泊施設であり、しかも彼が城の執事だったとは驚いてしまう。
アーシュレイとも親しい間柄で、多分、リンダ同様に彼が信頼している人なんだろう。
城で役職についている偉い人は、ミネルヴァのような人ばかりではない。
そう思えば、気が楽になってうれしくなるコレットだった。
「では、よろしくお願いいたします」
ジュードが部屋を辞していき、さあがんばって仕事に取り掛かりましょうと執務机に向き直ったコレットは、その量の多さに目が点になった。
置かれた書状の束は、計ってみれば左手の小指ほどの厚さがある。


