イジワルな彼とネガティブ彼女

横断歩道の向こう側に、本田さんが立っていたから。


真っ直ぐ歩いたら、確実に本田さんに見つかっちゃう。


かといって、足立くんに方向転換をお願いする理由が思いつかない。


どうしよう・・・と悩んでいるうちに、信号は青に変わってしまった。


・・・しかたない、下を向いて歩こう。


なのに、横断歩道を渡り終わったら、


「展示会前なのにデートなんて余裕だな、高橋」


本田さんが横断歩道を渡らずに待っていて、声をかけてきた。


私は、あわてて足立くんの手を離して、


「よ、余裕だから、だいじょうぶなんです。


彼とも、これから打ち合わせを兼ねて食事するんです」


「ふーん、余裕ねぇ・・・。


この前はそんな余裕は感じなかったけど」


「もう、なんなんですか、本田さん!


私なりに一生懸命悩んで考えて、必死なんです。


御社みたいな大手にかなうはずがないと思ってましたけど、頑張ろうって決めたんです」