「高橋、莉子ね」


名刺と私の顔を見比べながら、ニヤニヤしてる。


しかも、いきなり呼び捨てって。


そりゃあ、年齢も肩書きも年収も、あなたの方が上でしょうけど。


「では、失礼します」


「また近いうちに、な」


わけのわからない言葉を残し、本田さんは改札を通っていった。



会社に向かって歩きながら、ふと思った。


本田さん、なんでこの駅にいたんだろう。


改札を通ったってことは、SFYの最寄り駅はここじゃないってことだよね。


この駅に、何か用事でもあったってこと?


仕事が始まってからも、ノドに何かがひっかかっているようで、落ち着かなかった。