「気をつかってくれてありがとう。


板挟みで大変だったんだね」


「まあな」


楓さんは、あまり多くを話さなかったけど。


いま隣にいる楓さんのぬくもりを信じて、ついていこうと思った。


「もうひとつ、聞いていい?」


「なんだよ」


「結婚したい人って、誰?」


楓さんは一瞬で、恥ずかしそうに顔を赤らめた。


からかうようにニヤけてる私に気づくと、


「莉子だよ。


俺は、莉子と結婚したい」


覚悟を決めたような真剣な顔で、私の目をまっすぐみつめながら、キッパリと言ってくれた。


『私でいいの?』なんて、マイナスなことは言いたくなかった。



「私も、楓さんと結婚したい」



生まれて初めての、ポジティブ発言。