最終日は後片づけもあって少し早く閉まったので、展示場を出たのは19時過ぎだった。


「高橋さん、約束した食事行きましょうよ」


「ごめんね足立くん、私疲れちゃったから、まっすぐ家に帰るよ」


「・・・そうですか。


でも俺、昨日今日と高橋さんを見ていて、やっぱり高橋さんが好きだってわかったんです。


なので、今日はあきらめないです」


足立くんは、見た目とは違う強引さで私の手を握った。


「ちょ、ちょっと待ってよ」


そこに突然、楓さんが現れた。


「莉子、今までほっといてごめん」


私はあわてて、足立くんの手を振りほどいた。


「・・・楓さん、なんで?


私なにか、怒らせるようなことした?」


「いや、莉子は悪くない」


「じゃあなんで、無視したりしたの?


展示会で勝負しようって言ってたじゃない。


だから私、今まで以上に頑張ったのに」


そこまで一気にしゃべったら、勝手に涙が流れてきた。


「莉子、俺、話があるんだ」


「話すことなんて何もないです、足立くん行こう」


「えっ?」


不意に名前を呼ばれた足立くんは、かなり驚いていたけど、私と一緒にその場を離れた。