イジワルな彼とネガティブ彼女

会場に着くと、まだオープン前だからバタバタしていた。


「高橋さん、おはようございます」


「おはよう、足立くん」


「さっき、本田さんいましたよ」


「えっ?」


キョロキョロする私を見て、足立くんはフキゲンな感じで言い放った。


「嘘です」


「もう、イヤだなー足立くん、からかわないでよ」


「まだ、本田さんのこと好きなんですね」


そう言うと、バックヤードへ入っていった。


・・・そうだよ、まだ好き。


こんなに距離を感じていても、楓さんのことを想っている。



初日の今日は、報道機関や業界関係者が多かった。


うちみたいな中小企業はヒマだと思ってたけど、意外と来客が多くて驚いた。


サンプルもみるみる減っていき、試し書き用紙も在庫があやしくなってきた。