印刷が終わったら、仕事を言い訳にして実家をあとにした。


行きよりも大きな荷物を持って、鎌倉から東京へ向かう。


両親は、私を心配していろいろ言っていると、頭ではわかっている。


私を大事に思ってくれているから、こうして日持ちするものをたくさん持たせてくれていると、わかっている。


だけど、実際に会うといつも『結婚しなさい』って言われるから、よけいに反発してしまい、翼くんの存在も私の気持ちも話せなかった。


あーあ、なんか頭まで痛くなってきちゃったな。


電車の座席に座りながら、うとうと眠りについた。



寝てしまった時に備えてセットしておいたスマホのアラームがふるえて、目を開けるとまもなく最寄り駅に着くと気づいた。


帰ったら荷物を片づけて、少し寝よう。


電車は駅にすべりこみ、私は少しふらつきながらホームにおりた。


次の瞬間、目の前が急に暗くなり、体に衝撃が走った。


「だいじょうぶですか?」


そんな声を、かすかに聞きながら。