愛しの残念眼鏡王子

「危ないっ!」

突如聞こえてきた声を共に、勢いよく引かれた腕。

おかげで倒れずに済んだけれど……聞き覚えのある声に、焦りを感じてしまう。


「大丈夫!?」

掴まれた腕はすぐに離され、代わりに両肩をがっちり掴まれてしまった。

自然と絡み合う視線の先にいたのは、慌てた様子の専務だった。

「……専務? どうしてここに……?」

突然現れた専務に焦りと共に、驚きを隠せない。

そんな私に専務は声を張り上げた。


「それはこっちのセリフだよ! どうしたの、こんな遅い時間にひとりで!」

切羽詰った形相でいつもより大きい声に、たじろいてしまう。


「え、っと……」

「なにより危ないだろっ!? 田舎でも変な人もいるんだから」


私の声を遮り、怒りを含んだ声色を発した専務に、キュッと口を結んでしまう。

だってこんな専務、初めて見たから。

余裕がなくて、焦っていて。……そして怒っている専務を見るのは初めてだから。