愛しの残念眼鏡王子

「えっと……ありがとう。お世辞でも香川さんにそう言ってもらえて嬉しいよ」

照れ臭そうに笑うけれど、私は笑えない。


どうして伝わらないのかな? 専務は魅力的な人だってことが。

小野寺さんだって、きっと専務の魅力を知っていたからこそ、最後に専務に言った言葉を残したんじゃないのかな?


専務は魅力的な人だから。

だからきっと運命の人が現れるって。


伝わらないもどかしさと、専務の無自覚ぶりに次第に沸々と怒りが募っていく。


不器用な人だと思う。

だって自分から幸せを、手離しているようなものなのだから。


もしかしたら小野寺さんが退職してからも、私のように専務の魅力に気づいて、好きになった人がいたのかもしれない。


だけど専務はこんな感じだから。

彼は相手の好意に気づくことなく、幸せを手離していたんじゃないかな?


考えれば考えるほど、そう思えてならない。

それなのに専務ってば、気づかずに笑っているなんて……!


感情は昂ぶってしまい、気づいたら想いが言葉として出てしまった。

「どうして笑っているんですか?」