愛しの残念眼鏡王子

今の私にできることは、こうやって専務に肩を貸すことだけ。

もどかしいけれど、ただの部下でしかない私に専務が甘えてくれてことが嬉しかった。

我慢することなく、私の前で泣いてくれていることが、切ないけど嬉しい。


どれくらいの時間、専務は泣き続けただろうか。

心地よい風が吹き荒れた時、ゆっくりと頭が離れていった。

そのスピードに合わせるように隣を見ると、彼は眼鏡を外して涙を拭っていた。


「ごめんね、お言葉に甘えちゃって。……でも思いっきり泣いてスッキリした」

「いいえ、そんな……」

眼鏡をかけて、いつもの笑顔を向ける専務に胸が苦しくなる。


「情けないよねー、三十四にもなっていつまでも失恋引きずっているとか。……もう聞かれちゃったから話しちゃうけど、俺……ずっと連敗続きなんだ」


どこか吹っ切れたように話す彼だけど、いまだに瞳は潤んだままだった。

それがますます私の胸を苦しくさせていく。


無理に話してくれなくてもいいという想いと、専務の過去の話を聞きたい自分がいる。

専務は私と出会う前、どんな人とどんな恋愛をしてきたのだろうか。

どうして幸せになれなかったのだろうか。