愛しの残念眼鏡王子

一緒に生活を続ければ続けるほど、あれほど波長が合うと思っていた彼と、小さな言い争いをすることが増えていった。


一緒に暮らしていると見えてくるものがあったり、生活習慣の違いを感じたり。


けれどそれが結婚前に、同棲する意味だと思っていたし、彼となら分かち合えて乗り越えていけると思っていたんだけど。


『仕事だから』を口癖に、彼の帰りは遅くなるばかり。

休日の日も出勤していって、同じ家に暮らしているのに、ほとんど顔を合わせない日が続いていた。


それでもなんとか彼との生活が、一年以上過ぎた頃――。

信じられない噂を会社で耳にした。


彼が、営業部の部長の娘さんと婚約したという、信じられない噂を。

最初は耳を疑った。

なにかの間違いだろうと。

でも――深夜に帰宅した彼を問い詰めると、あっさり認めたのだ。

悪そびれた様子も見せず、まるで業務報告をするかのように淡々と。