愛しの残念眼鏡王子

職場にはそれほど親しい友人はいなくて、毎日会社と自宅の往復を繰り返すばかり。
正直、寂しかったのかもしれない。


『あのさ、もしよかったら今度、ふたりで食事に行かない……?』

恐る恐る聞いてきた彼の言葉に、私は迷いながらも頷いていた。


それから何度か彼と仕事帰りに食事を重ね、休日にはふたりで外出して。

付き合うまでに時間はかからなかった。


お互い性格が似ていて、一緒にいると心地よくて安心できて。

一年、二年、三年……と交際期間を増やしていくたびに、彼との仲は深まってい
った。


いや、そう思っていたのは私だけだったのかもしれない。

彼と付き合い始めて三年目、私が二十七歳を迎えようとしていた頃だった。

彼から結婚を前提に、まずは同棲しないか?と言ってくれたのは。


私も二十七歳になり、彼との結婚を意識していたから、言われた時は飛び跳ねたくなるほど嬉しかった。


それから休日はふたりで物件巡りをし、ふたりで生活するのに十分な広さの賃貸マンションを借りた。