【湊side】


"ドナーはみつかる、絶対。そして湊くんは大好きな歌を世界中に響かせるんだ。私が湊くんの歌声を好きなように………きっと世界中の人があなたの歌で笑顔なる。………絶対よ、その未来しかない"




そんな事を言われて、俺はひたすらに嬉しくて。思わず素直になってしまった。

勢いで、誓いにも似た約束までしてしまった。だけど、後悔はしてない。


むしろ彼女のおかげで、前を見れたんだ。俺ひとりではこの答えには辿り着けなかった。

本当に、感謝している。





───だからだろうか。

病室に戻ってからも抱き寄せられた肩が、指切りをした手が、まだその温度を残しているみたいに熱く思えた。



結局あの後、他の仕事を放って俺を探しに出てなかなか戻らなかった佐原さんを、俺たちが病棟に帰ってきた後に、当然病棟師長さんは怒ったけれど、

その場で俺が「病院内で迷ってた時に佐原さんが来て誘導してくれた」なんて適当な嘘をついたところ、なんとかその場は収まってくれた。



今日一日で、色々ありすぎた。

ただでさえ退屈で代わり映えのしない入院生活だ。一日の内にこんなに感情を色々な方向に揺り動かされたのは久しぶりだ。


どっと疲れてしまった。



そのせいなのか、肩の荷が降りたからなのか。


その晩は息苦しさに起こされることもなく、それこそ死んだように、ぐっすり眠ることが出来た。