「ねぇ…………俺、どうしたらいい……?どうしたら大人になれるんだと思う……っ?」
「湊くん………」
「怖くなんかないって………どんな運命も受け入れてやるって……どうして言えないんだろう………っ……俺じゃなくて………もっと強いやつならよかった………っ」
長い睫毛をまたたく度にどうしようも無く流れる涙に、嗚咽が混じる。
胸に手を当てて、顔を歪ませた湊くんを見て、私は慌てて傍に駆け寄った。
「湊くん、大丈夫!?」
荒い息と嗚咽の間になんとか絞り出すように、だけども魘されているかのように弱々しく、何度も何度も"どうして"と言葉を零す。
「ごめんなさ……………泣くつもりじゃ……ほんと………おかし……っ」
その涙のせいで呼吸もままならない
癖に、まだ強がって笑顔をつくる湊くん。
泣いてなんかいないと、またいつもの表情に戻そうとする。
そんな彼を見ていたら、どうしようもなく胸がきゅっと苦しくなって、気付いたらその華奢な身体をこの胸に引き寄せていた。
「佐原さ………」
「─────今、顔見えてないよ」
その一言で、ピンッと張り詰めていた糸が切れてしまった。
全身から力が抜けていく湊くんが、必死に腕を回して私の背中に縋りついた。
もうどうしようもなく流れ出す涙に、湊くんは声をあげるように泣いた。
「さわら…さ…………っ…俺………っ」
「────ここに居る。聞いてるから」
速まった慟哭に揺れる湊くんの小さな背をポンポン、と宥めるように摩った。
「本当は…………っ不安、なんだ……………負けなくない………毎晩………このまま眠って…………そのまま死んだらどうしようとか…………考えて…………」
「──────うん…」
「俺……………死にたくないから生きてる………でも本当は…………っ……生きたいから生きてるって言えるよう……………になりたい」
死にたくないから、生きている。
生きたいから、生きている。
その二つは同じことの様で、本当は全然違う。そのことを湊くんは、誰よりも知っていたんだ。


