最上階には図書館があるけれど、
この時間だからもう誰も居ない。
この階には病室もないから、
昼間でもあまり人は居ない。
静かな空間だ。
だからだろうか。
すぐに気付いた。
ふと耳を通り抜ける、
風のように透き通った音。
覚えのある声だった。
───湊くんが……歌ってる………?
そっと屋上の入り口の
小窓から覗き込む。
屋上の端。角の方で揺れる、
あの少し茶色がかった黒髪。
確かに湊くんの姿を捉えて、
私はひとまず、ホッと安泰の息をついた。
────湊くん………。もしかして
昨日もここで歌ってたのかな。
湊くんが口ずさんでいるのは、
比較的明るい、どこかで聴いたような
よくあるポピュラーな歌。
私は悪いと思いながらも、
屋上の入り口の前で
しばらく歌声を聴いていた。


