明日も歌う あなたのために


夕食が届いた頃、
岬と母さんは家に帰っていった。

俺にちゃんと食事に手をつけるように
しつこく言い付けながら。



だけど俺は、2人が
帰ったのを確認すると、箸を置いた。


食べ飽きた上に美味しくない。
薄味だし、心臓の悪い俺向けに低糖質だ。



デザートのパイナップルにだけ
手をつけると、俺はまた横になった。



枕に顔を埋めるようにして、
うつ伏せになる。
母さんには、心臓に負担だから
なるべくやめろと言われた体勢。

少し息苦しいけど、
自分の心臓の音がよく聴こえた。




───ドクン。ドクン。ドクン。




一定のリズムを刻む。

俺が聴いても、何が普通の人の
心臓の音と違うのかなんて分からない。




だけどいつか、
必ず使いものにならなくなる日が来る。






その日までに、俺に何が出来るだろう。


どうやって、誰に、
何を伝えて、何を残すのだろう。






────俺には歌しかないのに…………。




言葉にならない気持ちは、
いつだって歌に乗せてきた。
誰かに伝えたいときも、
どこかに吐き出したいときも…………。