それを見て、
胸がきゅっと苦しくなったのは、
どうしてなのか分からない。
「やっぱり、おにーちゃんのうたが
いちばんだね!」
岬はいつもそう言ってくれた。
「おにーちゃんがかしゅになったら、
みさきもなろうかなぁっ」
「………………うん」
─────ごめんな、岬。
歌手になんて、なれない。
俺の夢は、岬の夢でもあったのに。
勝手に潰して、ごめん。
昔から、岬は可哀想な奴だった。
3年前。岬からしたら
まだたったの3歳だった頃、
俺に心筋症が見つかって
家の空気はガラリと変わってしまった。
指定難病だから、個室に入院しても
そんなに費用はかからないし、
治療費だって免除されてる。
だけどやっぱり治すのには
どう足掻いても最後には移植しかなくて。
それにはとんでもない費用がかかるから、
母さんも専業主婦をやめて
働くようになり、
父さんもなんだか出張が増えた。
就職して家を出た
年の離れた兄ちゃんも、
移植するなら自分も何割か
負担すると言ってくれている。
だから岬は、いつも保育園が閉まる
ギリギリまでひとりで迎えを待っていた。
甘えたい盛りの妹から、
両親をとってしまったような気分だった。
それどころか、
俺が家にいて、たまの両親の休みでも
俺のせいで遠出は出来なかった。
そのせいで岬は、
遊園地にも、プールや海にだって
行ったことがない。
1度だけ入院中に、
”たまには三人で海とか出掛けたら?”
と言ってみたことがあったが、
岬が「おにーちゃんとじゃなきゃいや」と
言ってくれたんだ。
嬉しかったけど、
すごくすごく、申し訳なかった。


