翌日。

いつも通り、夜勤さんとの
申し送りが終わって、
私は各病室を回っていた。

今日の申し送りの時に
湊くんの受け持ち看護師や
夜勤で湊くんを担当した看護師から
彼の名前が挙がることは無かった。


───よかった。湊くん昨晩はなにもなかったみたい


そう思って湊くんの病室へ
検温の為に向かって居ると、
帰りの支度をして私服に着替えた
友香に引き留められた。

「友香?どーかした?」

友香はなにやら
心配そうな顔をしている。

「あのね、昨日私夜勤で
湊くん担当だったの、
申し送りでわざわざいうような事
じゃないから黙ってたけど、
やっぱり気になって……」


「なにがあったの?」


「昨日ね、食器回収しようと思って
325号室行ったの。19時頃…かな?
そしたら湊くん病室に居なくてね、
凄く珍しいなと思ったけど
まぁ別に気にしてなかったの。
そしたら消灯ギリギリに
帰ってきたみたいなんだけど……」


「うん。それで?」


「その後から湊くんなんか
凄いぐったりしてたから心配で……、
さり気なく何してたのか聞いたの。
そしたらなんか話逸らして
笑顔で誤魔化されちゃって…」


──想像つく。
これ以上何も言わせてくれない、
あの笑顔ね。


「先輩に言ったら、どこかで発作とか
転倒になってたりしたら大変だから
行き先ぐらいは把握しとけって…」


確かに万が一の何かあった時、
行き先の心当たりが0だったら
探すのも大変になってしまう。