「最近ね………。あんまり調子良くないの、湊くん」



「へ……………?」




時間帯的に人気のないデイルームで、私たちは向かい合うようにしてソファーに座った。



「だから今日アラームが鳴った時、すごく焦った。それで駆けつけたら………湊くんは何かに怒ってたの。物凄く」



あの温厚な湊くんが、一体何にあんなに怒っていたんだろう。

あの「花菜の気持ちを汚すようなこと」とは、何なんだろう。




「────私、話聞いちゃったんだ……」




花瑠はバツが悪そうに苦笑いをした。


花瑠は、あそこにずっと居たのだろう。

焦っていたから、病室に駆け込んだ時には気づけなかったけれど。




「今日ね。本当は高梨に……謝りたくてきたの」




「謝りたくて………?」





「高梨のこと散々無理させて振り回した挙句、車椅子は倒しちゃうし……おまけにお礼も言わずに怒鳴って帰っちゃったから……」




花瑠は本気で後悔しているようだった。

その細い指が、微かに震えている。




「私こそ………ごめんね。叩いたりして…」



こんなにもすんなり出てきた「ごめんね」に、私自身も驚いた。