「湊くん!!」
聞き馴れた声がして、バッと反射的に高梨の肩と頬から手を離して、尻餅をつく。
「おねーちゃん…………」
廊下の向こう、ロビーの方から足早に駆け寄ってきたおねーちゃん。
───大丈夫………見られてないみたい。
「おねーちゃんどうしたの?」
なるべく平静を装ってそう尋ねた。
「どうしたの、じゃないわ!あんまり遅いから心配したのよ!?」
おねーちゃんは珍しく、少しだけ怒っているようにも見える。
だけど私と目が合ったのはほんの僅かな時間で、すぐ心配そうに高梨の元へ駆け寄った。
「湊くん、大丈夫?!」
「───大丈夫よ、おねーちゃん。別に寝てるだけだから」
私はそれがなんとなく嫌で、わざとイヤミっぽくそう言い放った。
私の珍しい態度に、おねーちゃんは少し驚いたような顔をしたが、高梨が目覚めたのか「ん…」と声をあげると、すぐに視線は高梨に戻った。
「花菜………?」
「湊くん、大丈夫?」
「…うん」
────だから、そう言ってるじゃない。
せっかく2人きりだったのに、なんだか突然やってきたおねーちゃんに高梨を取られてしまったような気分だった。


