救急車に乗った時の高梨はもう意識を失っていて、私の握った手を握り返してはくれなかった。
だけど、心電図モニターは確かに小さな波を描いていたのに。
不安定な喘鳴のような呼吸が、確かに聴こえていたのに。
ストレッチャーが処置室に着いた後、看護師さんや救急救命士さんはなにやら慌てた様子で叫ぶ、
『ギャスピングです!』
『AED準備して!!』
聞いたこともない言葉ばかりだったけど、分かってしまった。
AED、直線を描く心電図モニターの波。
すぐに胸骨圧迫が行われた。
AEDを持った救急救命士さんが、「さがって!」と叫んだのと同時に、処置室の扉は閉められてしまった。


