「彼が私にくれる言葉は、いつもまっすぐで誠実です。添野さんの”好き”はまるで挨拶のようですから」




思い切った私の正直な言葉に、添野さんの顔からあのヘラヘラした嫌な笑みが消えた。




ふんぞり返っていたベッドからスッと立ち上がり、私を見下ろして言った。



「─────本気やゆうたら?」



先程とは打って変わった真剣な表情で、添野さんは左手の親指で私の顎をクイッと上げて目を見て言った。


息のかかるほどの距離感に思わず恐怖さえ感じるが、ぎゅっと唇を噛み締めて、添野さんの手を軽く振り払った。



「それでも変わりません。私が好きになれるのは、湊くんだけですから」




私に振り払われた左の手のひらを見つめながら、添野さんはいつも以上に不敵な笑みを浮かべて私の目を見る。





「俺かてその”湊くん”とやらには絶対に負けへんで」





まるで宣戦布告するかのようにそう言った添野さん。








この日、添野さんの前で湊くんの名前を口に出してしまったことを、激しく後悔することになるなんて、

この時の私には、知る由もなかった。