笛木はふっと、要を見ると挑発的な笑みを浮かべた。


「あれ、もしかして暁。俺に妬いてんのか?」


 私はふと、要に目を向けた。


 要は怒っているような、そして冷たい目で、笛木を睨んでいた。 


 それは、今まで見たことのないような表情だった。


 要は、いつも穏やかだから、見ている皆もびっくりしていた。


「妬いてたら、どうなるわけ?」


「おっと、暁。質問には答えで返してもらわないと。」


 要の目付きは一層鋭くなるが、笛木はまだ、挑発的な笑みを浮かべている。


 そこで、要が口を開こうとすると、丁度先生が入ってきた。


 先生は、まだ席に座っていない人達に

「早く席着けー。」

と言い、立っている私達は席へ座った。


 私は、要達の言い合いが終わり安心した。

 
 だけど何を言い争ってるのかわからずにいたから、納得することができなかったんだ。


 笛木の『妬いてんのか?』から言い合いが始まった。


 妬いてるとは、嫉妬しているってことで、あってるとは思うけど。


 要はいったい誰を思って、笛木に妬いたんだろう。


 私はなぜか、心がきゅっと締め付けられるような、そんな痛みを感じた。


 要が、私じゃなくて他の人を思っていることが何だか嫌だった。


 何だろう……この気持ち。 


 私は、そんなことを思いながら、要と笛木を交互に見ていた。