私達が、あーだこーだと喋っているうちに要が教室へ戻ってきた。


「二人ともうるさい。廊下まで声聞こえてたぞ。」


 後ろから要の声が聞こえる。


「はいはい。それはいつものことだし、気にしない気にしない。」


 私はそう適当に言った。


「ねぇねぇ、美然さっきのことだけどさ……、ふごっ。」


 美然に続きを話そうとすると、後ろからふいに要に口を塞がれた。


「ちょっと、何すんのよ。」


 私は要を見ようと、後ろを向いた。


 すると、要が私の顔に自分の顔を近づけてきた。


 私は、なんだ?と思ってびっくりしたけど。


 要はそのままじーっと私を見つめる。


 要の真剣な眼差しが私を見据えて、私の目をそらさせない。


 いつの間にか私の口元から手が離れていた。


 しばらくの間、沈黙が続く。


 放課後の静かな教室が、まるで要と私だけの、二人だけの世界なように感じた。


 要はどんどん顔を近づけてくる。
 

 改めて要を見ると、昔とは全然違った。


 昔は要は小さくて、弟みたいで可愛いかったけど今は違う気がする。


 今は背も私より高くて、喉仏が出ていたり、体格も大きかったり。


 それに、力もそれなりに強くて、顔も他の人と比べたらかっこ良くなってる。


 意識するって、こういうことなのかな。


 好きって、こういうことなのかな。
 

 ドキドキするけど、ずっと見つめていたくて。


 でも、見つめていたら、どうにかなってしまいそうで。


 でも、それをやめたくなくて。