専務が出席するパーティーだ。きっと各界の重役が集まるのだろう。
そんな場で、もし何か粗相をしてしまったら。
専務だけではなく、会社にも悪影響を及ぼしてしまう可能性だってある。
いつもの私の強気な態度で乗り切れるような、そんな生易しい場じゃない。
それが分かっているからこそ、初めての専務のお供では、園原さんの立ち振る舞いを間近で見られる環境が欲しかった。
「立花が弱気とは、珍しい事もあるもんだな」
「私だって普通の人間です。最初から何でも自信満々に出来るわけないじゃないんです」
以前川北に言ったように、自分に自信をつけるために多くの時間を割いて勉強をした。本や経済誌から多くの情報を身につけ、実際の現場では失敗から多くのことを学んだ。
「そんなの当たり前だろう。別に初めから完璧を求めてなんていない。失敗してくれたってかまわない」
「でも……」
「俺の立場を気にしているのか? だとしたら、それは不要だ。これまで培って来た信頼は、お前の些細な失敗では揺らがない」
それに、と言って、専務は私を見る。
「普段通りの立花でいれば、何の問題もない」
さらっとそんな台詞をはき破顔した専務に、不覚にも私の目は釘付けになった。
(この人、私を励ましてるの……?)
「当日は、十三時には会社を出る。衣装は当日レンタルだから、特に用意する必要はない。それから……」
専務が明後日の段取りを説明している。けれど、ちっとも耳に入っては来なかった。
いつもとは違う専務の一面を垣間見て、何故か心がざわついている。
(……でも、気のせい、よね……)
そう結論付け、もやもやした心に蓋をした私は、明後日のレセプションパーティーへと思考を切り替えた。

