女王様は憂鬱(仮)


確かに、彼のような若さで専務という立場にあり、将来は会社を背負って立つ可能性だってある独身男は、女性にとってはこれ以上ない優良物件だ。
加えて、この男は外見もイケメンときている。はっきり言って、ドラマや漫画の世界だけに存在する希少生物である。

しかし、万が一彼が今の役職になかったとしても、十分に女性を虜にする魅力は持ち合わせていると思う。
もちろん私は、まるで興味なんてないけれど。

それにしても、意外なのは、専務が自身を冷静に評価していることだった。

恵まれた立場にあり、恵まれた容姿も持ち合わせている彼は、これまでも女性に不自由することなんてなかっただろう。そんな立場にいれば、自惚れた人間に育っても不思議はないのに──…


「立花は信頼できそうだ」

「え?」

「仕事の面でも、女性という面でも」

「女性、ですか?」

「そう。立花は、俺にまるで興味がないだろう?」

「まぁ、そうですね」


その通りなので頷くと、専務は嬉しそうに笑った。


「一年間、立花とならうまくやっていけそうだ。これから立花には、外部のイベントにも同行してもらう。俺の秘書という立場を大いに活用して、業界に顔と名前を広げるといい。一年後、営業に戻ってからも必ずプラスになるだろう」

「……はい!」