女王様は憂鬱(仮)


羞恥に震えていると、専務は更に爆弾を投下した。


「しかし、枕営業で資産数兆円とは、立花は男を昇天させるテクニックをそんなに持っているのか?」


真顔でそんな明け透けな質問を投げかけられても、反応に戸惑う。

一体、どう応えろというのか。持っているテクニックのあれこれを語れというのか。

──いや、そんな事できる訳がない。


「いやですわ、専務。わたくし、そんな事を口にした覚えはございませんわ」

「今更取り繕ってどうする。俺はあの日、この耳ではっきり聞いたぞ」

「あ、あれは、言葉の綾というものですわ。本気にされましても……」

「なんだ、はったりか。まぁ、処女というわけではなさそうだが」


そう言って私の身体を上から下まで眺める専務に、我慢は限界に達した。
きっと、今ここでうっかり専務にビンタをお見舞いしても、私は何も咎められることはないだろう。

専務との距離を縮めるべく大きく一歩を踏み出し、にっこり専務に微笑んで見せた。

「歯を食いしばって下さいね」と一言声をかけると、専務の返事を待つ事なく大きく右手を振り切った。

ぱんっと、なかなかいい音が響く。
右手は多少じんじんしていたが、これまで積もり積もった鬱憤が晴らせたからか、心はとても晴れやかだ。