「A社ですが、売上の70%は、うちが苦手とするチャネルからの販売によるものです」
「……なるほど。業務提携できれば、うちにも利が大きくあるということか」
「はい。逆に言えば、あちらもうちの販売網は喉から手が出るほど欲しいのではないでしょうか」
「WINWINとは聞こえがいいが、うちにそれ以外のメリットは?」
「A社が自社開発しているユニットを我が社でも使うことができれば、大幅にコストダウンできます。価格面でも、戦える武器となるかもしれません」
「それを相手方に飲ませるには、うちもそれなりのリスクを負わなければならないな」
専務は小さく溜め息をつくと、資料をデスクに置いて立ち上がった。
「立花、よくやった。正直、短時間でここまでの質のものが出てくるとは思っていなかった。さすがだな、営業ウーマン」
「お褒めに預かり光栄です」
「枕営業というのは、ただの噂に過ぎなかったな」
にやりと笑う専務に、私の秘書の仮面がはがれ落ちた。
「あ、あったり前でしょう!? 実力に決まってるじゃない!」
「あぁ、そうだな。そんなこと本当にしていれば、うちの会社は今頃資産数兆円、だったか?」
こ、この男……
川北とエレベーターで言い合っていた時の台詞を、しっかり再現するとは──!

