「そこを何とか、収めていただきたい……っ! 皇専務は、我が社に必要な方なんです!」


その後、園原さんは延々と専務の素晴らしさを私に語り聞かせた。私が口を挟む余地もなく。

異動直後からずっと感じていたことがある。園原さんは、専務の事をとてもリスペクトしているのだ。

私はまだ、専務が権力にモノを言わせている場面にしか遭遇していないので、正直尊敬の念はまだ湧かない。どうせ会長の孫だからでしょう──と、心のどこかで思っているような気がする。


「園原さんは、どうしてそこまで専務のことを信頼されているんですか?」

「……僕は、専務とは長い付き合いですから。学生の頃から彼を知っています」

「じゃあ、昔からの友人ってことですか?」

「そうですね。でも、だから彼を評価しているわけじゃありませんよ? 立花さんも、これから彼と共に仕事をする機会が増えれば、僕の気持ちが分かると思います」

「はぁ……」


そんな日は永遠に来ない気がする。そう心の中で思ったけれど、なんとか口に出さずに飲み込む。

そんな私の心を知ってか知らずか、園原さんはにっこり微笑みながら、私にコーヒーミルを差し出した。それを受け取り、自慢の高級豆をゴリゴリ手動で挽く──これが、朝一番の私の仕事。