舞衣はピンクのモコモコフリースの上に、明日会社に着て行くであろうコートを羽織った。
鏡に映る自分を見て、他人事のように笑ってしまう。
凪さんもあのEOCのエリート軍団の一員なのに、こんな格好で外へ出る私を、黙認どころか小躍りしそうなほどの表情で私を見ている。
ジャスティンさんの話じゃ、凪さんがEOC一番の一流な人間だってことだったけど……
舞衣はもう一度自分の姿を鏡で見て、ため息と笑いがこぼれた。
凪さんがいいって言うんだったらそれでいい…
きっとトオルさんには怒られそうだけど…
舞衣はアパートの前に横づけされている車を見て、また驚いてしまった。
車には詳しくはないけれど、このエンブレムは誰が見ても分かる有名なものだ。
ベ、ベンツ……
凪の姿は見えない。
舞衣が荷物を持ってウロウロしていると、そのベンツの中から坊主頭の左耳にピアスをした強面イケメンが出てきた。
「舞衣さん、どうぞ」
彼はそう言うと後部座席のドアを開け、舞衣の荷物を受け取り、そして中へ入るように促す。
「あ、ありがとうございます」
舞衣は丁寧にお辞儀をして、その車の中へ乗り込んだ。
「忘れ物はないか?」
後部座席の奥の方で、ジャケットを脱いでくつろいでいる凪がいた。



