舞衣は涼し気に微笑んだ。
でも、かすみ草は抱えたままだ。
とにかく上着の胸元についているうさぎの目となるボンボンと、口となるワッペンは見られたくなかった。
舞衣自身はこのうさぎのモコモコのフリースは気に入っている。
でも、決して、人様にお披露目するようなものではない。
「このかすみ草、本当に綺麗ですね」
腰を下ろした時点で、舞衣の顔の鼻から下は、かすみ草の大きな塊に隠れていた。
凪はそんな舞衣をジッと観察する。
舞衣を知れば知るほど不可解で、凪の女性とは?という固定観念を全部覆す。
「それ、邪魔そうなんだけど」
「そうですか~~?
ちょっとチクチクするけど、でも、この生のお花の匂いがすごくいい匂いです~」
凪の位置からは、そう言っている舞衣の顔は、かすみ草の風船に隠れて見えない。
すると、凪はちょっと腰を上げて、舞衣からかすみ草の花束を奪い取り、床にそれを投げた。
「そんな投げないで下さい」
舞衣はかすみ草が可哀そうになり、とっさに立ち上がってしまった。
「あ……」
高級な黒のスーツに白と黒のお洒落なシャツの組み合わせが最高に似合っている凪が、ポカンとしている。
最低、最悪……
24歳でこの恰好、あり得ないですよね?…



