こじ開けて入ろうとした凪は、ドアの幅より大きなかすみ草の花束に手こずった。
「きゃ~~、凪さん、綺麗なかすみ草が~~~」
凪はその花束を容赦なく玄関ドアにねじ込んだ。
綺麗な丸い形に型どられたかすみ草は、凪の無茶な押し込みにより、ところどころの花が切れてしまい床にまき散らかった。
凪が玄関に入ってきた時点で、舞衣はそのかすみ草を凪から奪い取った。
凪の漆黒のスーツもかすみ草の白い粉で台無しだ。
凪はその状態に気づき、スーツの白い粉を玄関先で払った。
「うっ、うん」
スーツの埃を払い終えると、凪は小さく咳払いをして舞衣を見た。
舞衣はポカンとした顔で凪を見ている。
この非日常的な状況についていけないような顔をして。
「それ、くれ」
凪が小さい声でそう言うと、舞衣は険しい顔をして何かを考えている。
「……それくれ?」
凪は細くなり過ぎた目を力なく閉じた。
全く伝わってないし…
何かの単語だと勘違いしてるに違いない…
「それ。くれ。
それ、頂戴、その抱っこしてるやつ 」
舞衣はやっと状況を把握した。
あ、これね?…
「あ、ごめんなさい… はい、どうぞ…」



