「………どうしたんですか?」
舞衣は自分の格好を見て、ドアを3cmほどしか開けることができなかった。
だって、今日に限って、うさぎの耳のフードがついたピンクのモコモコのフリースのセットアップを着ていたから。
凪はその3cmしか開けてもらえないドアの隙間に顔を近づける。
「開けろ」
この場に及んで俺様の態度に、舞衣は少しだけげんなりした。
「本当にどうしたんですか? 突然に……」
舞衣はそれでも3cmの幅をキープした。
凪はまたあの恐ろしい顔で、舞衣の部屋を覗きこんでいる。
「ねえ、これ、見えてない?」
凪はそう言うと、そのもさもさの大きな花束をドアの隙間に入れ込んできた。
「え?? もしかして?? これ??」
それは巨大なかすみ草の花束だった。
あまりにも大き過ぎて直径1mほどの白い風船を抱えてるようだ。
「ねえ、重いし恥ずかしいし、早く開けろ」
凪は力任せにドアをこじ開けた。



