舞衣は隣に立つ凪をジッと見た。
灰色の髪の色は全体的に染めているわけではなく、部分的に色の変化をつけるメッシュカラーだ。
濃い灰色に見えるのはそのせいだった。
今度は、凪の横顔を見る。
紙コップを見ているせいで、伏し目がちな目元はまた大きな二重の線が見え隠れしている。
口元は?…
口角が上がってる。うん?笑ってる??
「そんなに俺が好きか??」
「へ?」
舞衣は急に恥ずかしくなり、自分のコーヒーを持ち慌てて凪から離れた。
凪はコーヒーメーカーの前で勝ち誇ったようににやついている。
「な、凪さんの方が、私を好きなんじゃないですか?」
舞衣がそう言うと、凪はコーヒーを持って舞衣の前に立ちはだかった。
「何でそう思う?」
「だ、だって、こんな高いスーツを買ってくれたり、酔っ払った私をちゃんと家まで送ってくれたり、親切だからです……」
「家まで送ったのは他の奴らにお願いされたからで、スーツを買ってあげたのはあまりにもパツパツのピチピチで見てられなかったから」
舞衣は急激に顔が真っ赤になった。
あ~、そうだった… 忘れてた……
「やっぱり、ちゃんとお金はお返しします……
凪さんに借りを作りたくないので……」



