イケメンエリート軍団の籠の中




生真面目な舞衣は、会社では何もなかったように仕事に集中した。
というより、まだ何も実感がないという方が正しいのかもしれない。

舞衣と凪の関係を知っているのはジャスティンしかいないこの職場では、いつものように、イケメンエリート軍団の日常が始まる。

トオルに謙人そして映司も、いつもの調子で舞衣にちょっかいを出してきた。
そして、今日は、在宅の社員も何人か出社しているため、会社内は活気にあふれていた。


「凪さん、急だったんですね… 最後に一言挨拶がしたかったのに」


たまにしかこない在宅社員の人達は、凪のブースを覗いて寂しそうにそう言った。


舞衣はとにかく今日を乗り切ろうと思った。
男性しかいない舞衣をいつでも甘やかしてくれるこの居心地のいい職場に囲われて生活することも、選択肢の一つだとしたら、大勢の女性はきっとこちらを選ぶだろう。

でも、舞衣は、どんなに給料がよくても、凪以外の優しい男性が近くにいてくれたとしても、心が満たされることは絶対にないと分かっている。

心と頭は別々の生き物……

心にまかせて行動する事が正しいのか、頭の中の理性に従うことが正解なのか、今の舞衣はまだ何も判断できなかった。


そして、会社に居る時間が過ぎていく度に、凪の存在の大きさに気づかされる。

凪さんは、もう飛行機に乗ったかな…?

舞衣はそう考えては何度も頭を振った。

会社に居る間は、凪さんの事は考えちゃダメ……
涙が出たら止まらなくなるの、分かってるでしょ……

でも……

凪さん、寂しいよ……

もう……

凪さんに会いたくてたまらない……