イケメンエリート軍団の籠の中




凪の周りには、別れを惜しむ人達が集まっていた。ここのバーの店員で涙を流している人間もいる。

舞衣は、注がれたビールを一気に飲み干す凪の豪快な飲みっぷりをうっとりと眺めていた。

そんな状況でも、映司は舞衣の隣から離れようとしない。
舞衣は映司が隣にいる限り簡単には抜け出せないと分かっていたため、ジャスティンのいる方へ行こうと席を立った。


「どこ行くの?」


映司は舞衣の手を取り座るように促す。


「マイマイの頼んだカクテルがもうくるよ」



「……はい」


舞衣は自分の押しの弱さにため息をついた。
他人の親切を邪険に扱えない人の良さが、いつも肝心な時に邪魔をした。

すると、いつの間に、取り巻きを引き連れた凪が舞衣の正面に座っていた。
舞衣を見る凪の顔は、恐ろしい程の鋭い目つきが際立っている。
少し伸びたグレーの前髪から覗く瞳は、獲物を狙う飢えた狼を彷彿させるほどだった。


「映司、明日出て行く人間はほったらかしかよ」


凪は皮肉を込めてそう言った。


「そうだな…
確かに今の俺には、明日出て行く凪より、今俺の隣に座っているマイマイの方が大事かも」


凪はフッと鼻で笑った。
でもその笑顔は氷のような冷たさを放っている。