凪は舞衣をエスコートして53階にあるフレンチレストランへ向かった。
ニューヨーク本社の同僚が来た時に一度だけ利用した事のあるこのレストランは、凪の部屋から見える夜景とはまた違った角度の夜景が堪能できる。
凪は一番眺めのいい席を予約していた。
舞衣はうっとりした表情を浮かべ、その美しい夜景に見入っている。
「あれ? あまりワイン飲んでないんじゃない?
どうした? 具合でも悪い??」
凪はあれほどのワイン好きの舞衣が、乾杯の時にしか口をつけていない様子を見て心配になった。
「ワインが大好きな舞衣のために最高級のワインを準備したけど、口に合わなかった?」
舞衣は凪を見つめたまま首を横に振る。
「じゃ、何で…?」
舞衣はゆっくりと深呼吸をした。
「凪さん、今日は本当にありがとう…
こんな素敵なお洋服を着て、凪さんの準備してくれた極上のデートは、私の想像をはるかに超えていて今でも夢を見てるみたい…
それと、何でワインを飲まないのかって言うと……」
舞衣はクスッと微笑んだ。
「今日のこの出来事は、私の記憶の中に色濃く残しておきたいの。
私、ワインは大好きだけどすぐ酔っ払うでしょ?
酔っ払ったあげく記憶まで飛んじゃうのは、今日だけは絶対いや。
凪さんからの最高の贈り物を、一つも欠けることなく全部覚えときたいから…」



