舞衣は用事を済ませたふりをしてまた自分の席へ戻ると、まだそこに映司は立っていた。
舞衣を見つけると、右手の人差し指で舞衣を手招きする。
「あのさ、マイマイさ、今夜は空いてる?」
舞衣は何も用事はないが、でも明らかに困った顔をした。
「アッパーフロアの他の会社の女の子と食事をすることになってるんだけど、マイマイも一緒に行かない?」
「え? 私が?」
映司こそ本当に困った顔をしていた。
「色々大人の事情があってさ、俺は気が乘らないんだけど、無理やりセッティングされたんだ。
その子に昨日のマイマイの話をしたら、アッパーフロアで働く女子のあれこれを教えてあげるって。
行かない?」
舞衣は頭を抱えて小さくため息をついた。
「映司さんとその人と3人だったら、ちょっと嫌です…」
映司は最高に整った顔を歪めて目を閉じる。
「そうだよな……
OK。ごめんね、時間を取らせて」
舞衣は本当に困った風に見える映司を見て、お人好しな仏心が顔を出した。
「どうしても困っているのなら、また言ってください。
もう一度、考えますから…」
映司は見た目麗しいハンサムな顔をクシャと笑顔にして、舞衣の頭に優しく手を置いた。
「マイマイ、ありがとう」



