二人が玄関から中へ入ると、人感センサーで全ての電動機器が作動し始める。
舞衣は靴を脱ぐと、リビングへ吸い込まれるように入って行った。
舞衣の目の前で、重厚なカーテンが滑るように開いていく。
「……………」
何も言葉は出ない。
40畳ほどあるリビングルームに映画館のスクリーンがあるようだ。
そして、床面から天井までの長くて大きな窓が、リビングの正面にある。
そのスクリーンのような大きな窓から、東京の夜景が一望できた。
そして、その窓を囲むように、豪華なグレー色のソファが並んでいた。
舞衣がうっとりした表情で窓の外を見つめていると、凪がワインとワイングラスを持って現れた。
「気に入った?」
凪は立ちすくむ舞衣をソファに座らせ、自分も隣に腰かける。
「あ、でも、凪さん……」
凪はワインのコルクをポンと空け、舞衣を見る。
「タロウさんは、凪さんは他人を家には入れないって言ってました。
私なんかを、入れちゃってもよかったんでしょうか?…」
凪は鼻でふっと笑って、グラスにワインを注ぐ。
「何でだろうな?…
でも、今日で、俺の中の何かがぶっ飛んだのは分かった。
分かりやすく言うと、俺はお前に嵌まった。
もっと分かりやすく言うと、全神経がお前を求めてる。
だから、家に連れて来たいし、一時でも離れたくない。
もっともっと分かりやすく言うなら、お前はもう俺のものだ」



