高く燃えゆく炎を、ただ見つめていた。


彼女を非難する群衆に紛れながら全てが燃え尽きるまで、ただ見つめていた。


十字に縛り付けられた彼女は確かにあの頃憧れ続けた人だったのに。

確かに、愛しいと思っていたはずの人なのに。


俺は何をすることも出来ず、ただその場に立ち尽くしていた。


どうして俺はここにいるのだろう。手を伸ばすこともせずに。


最後に微かに動いた彼女の唇は、一体何を伝えていたのだろうか。


彼女の全てが舞い散るなか、一人の女性がその灰を握り締め天を仰いでいた。


後悔するように。

懺悔するように。

自らを戒めるように。



「愛していたの」



微かに聞こえたその声と、零れた一筋の涙を美しいと思ってしまった俺はどこまでも罪深いのだろうか。